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Wada's Blog

腰に履いている剣を抜

 腰に履いている剣を抜いて空へ向けて掲げて後に胸の前に持って来る。

 

「徐将軍の勇戦に黙とう!」

 

 目を閉じて僅かながらの時間、徐晃に対して胸の内で語り掛ける。戦士として名誉な終わりだったと。

 

「洛陽へ戻るぞ」

 

「本陣は洛陽へ帰還する! 軽騎兵は偵察へ散れ!」

 

 目的を達した。international kindergarten 行軍は李項に全て任せてしまい、馬上で腕組をすると遠くを見た。敵だと言うのに失うのは何故だろうか虚しいものだな。好敵手が味方の後方支援よりも近しく思えるという気持ち、何と無くわかる気がする。

 

 洛陽に帰着すると住民の歓迎で迎えられた。もし敗走する部隊が入城しようものならば、また街が危険にさらされる可能性が高いから。 数日遅れで鐙将軍の軍も洛陽に戻ってきた、治安維持をする一部を残しての帰還。

 

「敵将徐晃を討ち取りました。得た捕虜は二千、他は悉く戦死です」

 

「ご苦労だ。鐙将軍の見事な指揮を見せて貰った、安定した運用に言うことは無い。遺体だが故郷へ送り返したい、扱いは丁寧に頼む」

 

「お言葉確かに承りました!」

 

「徐晃殿の本貫は河東郡楊県で御座います」

 

 郤正がそんな情報を差し込んで来る、ここが河南ということだから近隣地域ってことなんだろう。わざわざ口出しするんだ、言いたいことが他にもあろうさ。

 

「そうか。誰に任せるべきだ」

 

「李中衛将軍が名代に。大将軍中侯名義で、長子徐蓋殿宛を」

 

 李四兄弟は俺の名代として適切だ、そしてもし失われても代わりは存在しているわけか。郤正のやつも少しは戦争が解ってきているってことだな。

 

「李信俺の代理を果たせ」

 

「お任せ下さい!」

 

 弔問の使者だ、邪険にされることは無いし、これを襲うような奴らも居ないだろう。もしそんなことをしたら、一生徐一族に狙われることになる。あの徐晃の息子だ、節度を守りきっちりと弔うだけの度量を持っている。魏帝もこれを邪魔することは無いだろう。 捕虜はどうすべきか、共に戦って死んだのはきっと地元の兵で、降伏したのは一般の部下か。解放すればまた向かって来る可能性が高いな。南蛮方面へ移送すればよいか、とはいえ人員はそこまで割けない一気には動かせん。

 

「捕虜は百人単位で長安へ送り、舟で永安へ移送させるんだ。従順な者はそこで防衛につかせ、そうでないものは雲南まで行かせ兄弟の監視下におかせる」

 

 そんな遠くまで送られたら二度と戻ってくることはできない、魏の為に何かをしようという気持ちが無くなればそれで良い。人口という面で一つの財産になり得ている、ここで処刑するのはなんだか勿体ないと思えた。

 

 多少の余裕が生まれてきている、ということなんだろうか。

 

「各位の進言があれば聞くぞ」

 

 鄭参軍が進み出た。実務的な話だろうな。目線を合わせると顎を小さく上下させて促す。

 

「利用出来るならばとことんこれを利用すべきです。許都へ使者を送り、徐晃の死を悼み弔い品を献上して偵察をしてみると言うのはいかがでしょうか」

 

「そのような背徳的な行為はいかがなものか」

 

 黄参軍がしかめ面をして批判した。費参軍も郤参軍も良い顔はしない、董軍師もだ。一方で他の司馬や参軍らは真面目な顔で黙っているだけ。

 

「敵の首都へ堂々と入り込む機会をただ見逃すのは怠惰ではないだろうか」

 

「怠惰とは流石に聞き捨てなりませんな」

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