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素早く斎藤の間合いに入ると、手にした刀を右下から左上に斬り上げるように振るった。
「くッ……」
斎藤は間一髪でそれを躱す。切っ先が顎先の空を切った。
桜花はすぐに腕に力を込め、肉毒桿菌 針 足を踏ん張ると、返す刀で斎藤の首に刀を突き付ける。
「……い、一本ッ」
慌てたような松原の声が響いた。桜花は荒い息を何度も繰り返すと、刀を鞘に収める。
「俺の、負けだ。あんたは文句無しに強い。己を誇れ」
斎藤は額に浮かぶ汗を拭うと、先程刀を突きつけられた首元に手を当てた。
あの瞬間、本能として死を覚悟した。殺られるとはあのような事を言うのだろう。
「あ…有難うございました」
その入隊試験により、桜花の仮入隊が決定した。
現在勧誘に向かっている江戸からの入隊隊士の寝床確保の件もあるため、桜花は一先ずは今のままの部屋を使用することになる。
数日後。欠けた月が美しく光を放つ夜のことである。
八木邸の二階、つまり桜花の部屋に向かう階段を上る一つの影があった。
新撰組ではいつ何時も戦闘に備えられるように、仮入隊の時点で寝込みを襲い、その覚悟と適性を見極めるという試練がある。
普段は眠りが浅い桜花だったが、夕方に沖田や他の隊士とみっちり稽古をしたせいか、疲労感の為に深く寝入っていた。
土方の命を受けて、忍び込んで来たのは対戦相手だった斎藤である。
この試練を担うのは平隊士の役割でもあるのだが、桜花の腕前では斬殺されかねないと、副長助勤が担当することになった。
そこで白羽の矢が立ったのが斎藤である。
淡々と任務をこなし、かつその腕前を知る男。
だがその内心は複雑だった。何時かの明け方に寝間着姿で儚げに空を見上げる桜花を見た時、酷く心が掻き乱されたからである。
上司、それも敬愛する土方の命であれば滞りなく遂行しなければならないという使命感を胸に、斎藤は二階を睨んだ。
極力足音を立てずに階段を上り切る。床を見つめながら深呼吸をした。
そして顔を上げると、そこに広がる光景に目を見開き、息を飲む。
小窓から差す仄かな月明かりに寝床が照らされていた。そこには、あどけない寝顔で小さく寝息を立てる桜花の姿がある。
敷布に広がる黒髪、規則的に上下する胸元。二階は特に空気が籠るために蒸し暑いのか、寝乱れた裾から見える白い足──
煽情的なその姿に斎藤は動揺した。平静を装うとしても、血潮が煮えくり返り、心の臓が激しく波立つ。
島原のどんな艶めかしい娼妓よりも、感情が急き立てられた。
「……ッ」
斎藤は左胸に手を当て、何とか落ち着こうと目を瞑る。だがその瞼の裏にも鮮明に艶姿が映っていた。
邪念を振り払うように首を振ると、土方から依頼された時の光景や隊士達のむさ苦しい稽古姿を思い浮かべる。
そして目を開くと、寝入る桜花の足元に立ち、腰の刃引きされた刀に手をかけた。
それを抜き放とうとした刹那。
斎藤が足に衝撃を感じた瞬間、視界がぐるりと反転した。背中には微かな温もりと敷布の擦れた音が耳元で聞こえる。
僅かな殺気を察知した桜花が斎藤の足を引っ掛け、倒れかかったところを胸ぐらを掴み、布団へ押し倒したのだ。
「んぅ……、斎藤、先生…?どうして、此処に…」
斎藤は先程とは違う心の臓の鼓動を感じながら、