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六月初旬。
久我さんと食事をした日から、二週間が過ぎた。
あの日の帰り際、久我さんからの申し出により連絡先を交換した。
でも、あの日以来会ってはいない。
久我さんが送ってくるメッセージに対し、私が無難な返事を送る。
そして甲斐とは、幼兒英語教材 二人きりになると多少の気まずさを感じる関係が続いていた。
「結局甲斐とは進展ないわけ?面白くなーい」
「勝手に面白がらないでよ。少しも面白い状況じゃないんだから」
「ていうか、甲斐も甲斐だよね。何でのんびりしてるんだろ。依織が他の男に狙われてるっていうのに」
この日は、蘭と二人で休憩室で昼食を取っていた。
普段なら甲斐や青柳も昼休憩に入り合流するけれど、二人とも忙しいのか姿を見せない。
「ねぇ、来月温泉行かない?一泊で登別とか」
「いいね、行きたい!」
基本インドア派の私だけれど、温泉に行くのは昔から大好きだ。
道内には泉質のいい温泉地が沢山ある。
先月蘭と行った定山渓温泉も良いけれど、登別温泉は定山渓以上に人気がある。
「じゃあ、甲斐と青柳も誘っておくわ。青柳は奥さんと子供も連れてくるかもね」
てっきり蘭と二人で行くのだと思っていたけれど、甲斐も誘うと聞いて少し胸がざわついた。「私は蘭と二人で行きたいかな」
「何言ってんのよ。甲斐を誘うことに意味があるんだからね。ちなみに青柳はおまけだから」
あくまでも、蘭は私と甲斐の仲が恋愛に発展することを期待しているらしい。
期待に応えられる日はきっと来ないだろうと思いながら、お弁当の唐揚げを口に入れた。
「最近の冷凍食品って、本当に美味しいよね。この唐揚げ、昨日スーパーで広告の品だったから買っちゃった」
「ふーん。あぁ、そういえば昨日あのイケメンに偶然会ったわ」
「あのイケメン?」
「ほら、あんたに言い寄ってる久我さん」
「え、どこで?」
思わず箸の手を止めて聞いたけれど、蘭の表情はなぜか不機嫌そうだ。
久我さんと、何かあったのだろうか。
「昨日、仕事の後に軽く飲んで帰ろうと思って大通の立ち飲み屋に行ったの」
「あぁ、蘭がよく一人で行く店ね」
蘭はお酒を飲みたい気分のとき、私や甲斐を誘ってくれるけれど、一人で飲みに行くこともよくある。
蘭が一人で飲むときは、いつも大通駅の近くにある立ち飲みの店に決めているらしい。
ちなみに私は立ち飲みのスタイルが苦手なため、その店には一度も行ったことがない。「行ったら、ちょうどあの人が一人で飲んでたの。しかも、私の隣」
「凄い偶然だね。でもどうしてそんな嫌そうな顔してるの?」
「……別に。ただちょっと、苦手なタイプっていうか」
「え?本当に?」
蘭とは付き合いが長いから、どんな人が苦手なタイプかは私も理解しているつもりだ。
まず、店員に横柄な態度を取る人を嫌う。
それから、不潔な人。
食事の食べ方が汚い人や、女性のことを見下している人。
恐らく、久我さんはどれにも当てはまらないと思う。
「何ていうのかな……話してて思ったけど、いろいろ鋭いんだよね。多分あの人、私と同じドSタイプだと思う」
「え!そうなの?そんな風には見えないけど……」
私の知っている久我さんからは、ドSな一面が少しも想像出来ない。
蘭は一体、久我さんとどんな話をしたのだろう。
ここまで蘭を不機嫌にさせるなんて、何かよっぽどのことがあったに違いない。
そう思うと、何があったのか知りたくなってしまう。
「蘭、久我さんに何か嫌なことでも言われたの?」
「嫌なことは言われてない。ところで依織はさ、久我さんのこといいなって思ってんの?連絡先交換したんでしょ?」久我さんと連絡先を交換したことは、私の口からは蘭に話していない。
それでも蘭が知っているということは、昨日久我さんから聞いたのだろう。
「うん……何か話してみると、意外と共通点が多かったの。いろいろ話も振ってくれて、食事は結構楽しかった」
理想の恋の相手は、こういう人なのかもしれない。
私の目を見て話す久我さんを見つめながら、ぼんやりと思ったのだ。
もしも次に恋をするなら、同じ価値観の人がいいと思っていた。
「でも、まだ一回食事しただけだから。お互いのこと、まだ何も知らないようなものだし」
相手のことを深く知らずに交際に発展することは、望んでいない。
遥希と付き合い始めたときも、告白されてから付き合うまでに時間がかかった。
よく言えば、慎重。
でも悪く言えば、私の行動は自分のことしか考えていないものなのかもしれない。
「あの人、言ってたよ。依織からのメールの返事は素っ気ないって」
「……」
「でも、今はそれでいいんだって。どうにかして振り向かせたくて必死みたいよ。あんた、凄い好かれてるよね」
久我さんが私に好意を抱いてくれていることは、最初からわかっていることだ。
だとしても、第三者の口からその事実を聞かされると、急激に恥ずかしくなってしまう。「それで余計なことかと思ったけど、甲斐の存在、久我さんに話しておいたから」
「え?」
「依織には、私と同じくらい深い仲の男友達がいるんですよって。しかも、職場の人気者」
「ちょっ……!」
「安心して、あんたと甲斐がヤっちゃったことは言ってないから」
別に甲斐の存在を久我さんに隠しているわけではないけれど、私の口から甲斐の名前を出したことはなかった。
勝手なことをする蘭には、怒る気にもなれない。
私と久我さんがもしこの先親しくなれば、甲斐のことは自然と向こうも知ることになるだろう。
「何か話してる内に久我さんにムカついてきちゃって。少しぐらいダメージ与えてやりたくて、甲斐の名前出してやったの。ごめんね」
蘭は私にごめんと言いながらも一切悪びれることなく、早めに仕事に戻らないといけないと言って私より先に休憩室を出て行った。
結局、蘭は昨日久我さんとどんな会話をしたのか。
なぜあの紳士的な人にムカつくようなことがあったのか。
私が知りたいことは、何も話してくれなかった。
1. 無題
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I procrastinate a lot and don't seem to get nearly anything done.